エリクソンがクラウドへの移行を強く推進した理由

Karin Lindström

特集

Apr 30, 20241分

クラウドコンピューティングエンタープライズ・アプリケーションIT戦略

3年ほど前、エリクソンは80%をクラウドに移行する目標を設定しました。統一されたカルチャーを確立し、プロセスに異議を唱えて変えていくためです。当初の目標は達成しましたが、引き続き賢明に取り組んでいるとCIOのマット・ハルティン氏は語っています。

ハルティン氏(上写真)が4年前にエリクソンのCIOに就任した際、同社は多数の業務委託契約の見直しに乗り出しました。同時に、クラウドサービスVPのヨハン・スポー・レネバーグ氏が率いるクラウドチームは、モダナイゼーションと今後の明確なクラウド戦略を強調しました。 

「私たちは新たにパートナーの選定とクラウド移行を組み合わせることに決め、最新のコラボレーション構造をどのようにすべきかに多大な努力を払いました。システムの統合とインフラストラクチャを担当するクラウドパートナーが必要であり、当社の役割はエコシステムをまとめることだと理解していました」と氏は語っています。

どのようなモデルになるか、また各パートナーにどのような要件を課すかを見つけ出すためには長期に及ぶ徹底した調達プロセスが求められ、すべての主要なシステムインテグレーターの参加が必要でした。

「こうしてインスピレーションを得て、最終モデルを具体化することができました。共同作業によって達成できたのです」と氏は述べました。

10社以上のパートナー企業が候補に挙がりましたが、最終的にはグローバル共有サービス企業であるHCLが主要パートナーに選ばれました。協力体制を固めて大規模なクラウド移行を開始する段階になって、新型コロナウィルスによるパンデミックが発生し、緊急性が一気に高まりました。

「『どのように移行するか』から『いかに迅速に移行できるか』を考えなければならなくなったのです」とスポー氏は語っています。

クラウドへの移行の背景には、新しいテクノロジーをより迅速に特定し、使用したいという要求の高まりに基づいた戦略が大きく関与していました。IT部門が長い間やってきたように、6か月や12か月のリードタイムで実行するのは到底持続できるものではありませんでした。新しいテクノロジーにアクセスし、収益を生み出し、インフラを導入するにはスピードが最優先となってきていたのです。

事前作業の必要性

調達プロセス全体と並行して、リスクを中心としたクラウドの下地、および堅実な情報管理と規制コンプライアンスの下地を作る作業が行われました。

「情報の管理と分類をかなり深くまで行わなければなりません」とハルティン氏は述べています。

プロセス全体においてはまた、レビューチームが商業的および法律的要素を継続的にモニタリングし、その結果新たな運用モデルが必要となりました。

「当社はアジャイル作業手法とアジャイルプロダクションを採用しましたから、サービスプロバイダーとの作業を開始した際にはすでに導入されていたのです。基礎を築いたカルチャージャーニーの一環でした。それができていないと、企業は業務の新たな進め方やポリシー、プロセスを受け入れる準備ができていないのです」と氏は述べています。

野心的な目標

中核となるアプリケーションの80%をクラウドに移行するという目標も設定されました。

「全員が正しい考え方を持ち、既存のプロセスやカルチャーに異議を唱えて変えていくためにこの目標を設定しました」と氏は語っています。

目標は高く掲げましたが、達成可能な範囲とされました。

「当社は可能性がどのようなものか、かなりしっかり把握していたのです。10社のサプライヤーを試し、どの程度移行できるかの想定を検証しました。クラウドに移行するための技術面での実現可能性、および企業がどの程度移行して管理できるかをテストしたのです。その結果、80%は現実的な数字であると判断しました」

期待以上の成果

当初の移行から2年後、現在は全アプリケーションの90%以上がパブリッククラウドに移行されています。全アプリケーションの30%は新規のもので、およそ20%が廃止となりました。

「オンプレミスに残っている10%は、法的要件または技術的負債によるものです」

エリクソンのIT部門は、マイクロソフト、AWS、Googleの三大クラウドプロバイダーすべてを使っておよそ半分を使用し、残りの半分は事業外で消費しています。重要な問題はキャパシティやツールに容易にアクセスできる際のコスト管理です。財務プロセスは採用が最も困難なものの1つで、カルチャーを大きく変える必要がありました。

「コスト管理は、以前はインフラチームの担当でしたが、現在は運用チームの担当となり、かなり多くの管理が必要です。予算制限などの対策もまた使用することができます」とハルティン氏は述べています。

業務システムの移行

移行の大部分は業務システムをSAPからクラウドへと移行することでした。これにはおよそ6か月を要しました。

「当社のSAP環境は世界でも最も規模が大きく、複雑なものでした。非常に大規模な移行だったのです」とスポー氏は語っています。

成功に向けて、すべてのパートナーと密に連携し、プラニングが行われました。

「専門家と前向きに協力することが成功の要因でした。私たちは、SAPはAWSクラウドで問題なく作動することを知っていたのです」とハルティン氏は述べています。

300人以上がシフト制で働き、コアシステムの移行は1回の週末で完了しました。綿密なプラニングが功を奏したのです。

「翌週の火曜日に財務担当者から『今週末に移行する時は1時間おきに電話をしてくれ。問題があったらすぐ知りたいから』と言われた時には、移行はすでに完了したことを説明しなければなりませんでした」とスポー氏は語っています。

スピードの重要性

ハルティン氏は、エリクソンが行ったような迅速な移行は成功の手本だと信じています。

「他のインフラ戦略は全く意に介しませんでした。考えているよりもはるかに迅速に移行を完了できるのです。私たちはかなりきついスケジュールを立て、やや強制的に作業を進めました。しかし、クラウド移行を50%以上完了すれば、IT組織全体が変わります。ダラダラ延ばせば延ばすほど、より困難なプロセスになるでしょう」と氏は語っています。

またコストだけに目を向けるのは十分ではないと述べています。

「プロジェクト開始時はコスト削減も念頭にありましたが、より全体を見るようにしたのです」と述べ、それを考えるとクラウドのビジネスはいま、ITとビジネスが新しい形で同期し、よりまとまりができたと付け加えています。

特にコスト節減につながるのは、インフラとツールへのアクセスを得ることです。

「AIのような新規テクノロジーが進出した時に、すぐ利用できます。自分たちで数百万ドルを投資するよりも、クラウドプロバイダーによる何十億という投資を活用することができるのです。どちらが楽かを理解するのは難しくありません」とハルティン氏は語っています。

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Karin Lindström

Karin Lindström är redaktör på Computer Sweden. Hon har bevakat it-området i över 20 år och har ett särskilt fokus på cio-frågor och digitalisering i företag och organisationer.

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